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a lover's concerto 15




また、週末が巡ってくる。


夜に出かけて、お酒でストレスを紛らすのはやめた。
そのかわり僕は、アパートで大人しく読書をして過ごした。


いや、実際は、友人に飲みに出かけようと誘われた。
が、断ったんだ。


・・・ユノから、電話がくるかも、なんて。
そんなことがちらっと頭をよぎったから。


でも、金曜日の夜も、ユノからは連絡も何もなかった。


なんでこんなに気になるのかが、不思議なくらいわからなかった。
悩むぐらいなら、電話すればいいんだ。
それに、ユノのアパートだってどこにあるのかわかってんだし。


土曜日になって。


自分の部屋の窓から、外を見たら。
こんなことしてたら、じきにすぐ寒くなって。
人々は冬眠するように、外に出なくなる。
そんな季節になって、あの時こうしておいてもよかったんじゃないか、なんて。
そんな風に思いたくない。

なぜか、そんな気持ちになって。


「ミミ、ちょっと出かけてくる」


ミミは、僕の顔を見て、可愛らしく鳴いた。


足早に出てきたものの、何かがすべてふっきれたわけじゃなかった。
とにかく、歩きながらどうしようと考えた。


不思議と、ユノと最初に待ち合わせた、ユニオンスクエアに足が向いていた。
待ち合わせしたのに、ミミの調子が悪くなって、僕はユノに電話をしたことを思い出しながら。
前にあるバーンズ&ノーブルに入って、中をうろつく。

今はやりのベストセラーや、スポーツ雑誌を見ながら。
もしかしたら、ユノがここに来てないかな、なんて。
そんなこと想像したりして。

30分ほどうろついて、ふらっと外に出る。
ぶらぶらしながら、気がつくと。
ユノのアパートから3ブロックほど近くまで来ていた。

行ってみようか。
ベルを鳴らして、いなければ仕方ない。

僕は、ポケットに手を入れて、アパートに向かった。


程無く着いて。
歩道から、ユノの部屋を見上げる。

もちろん、ユノがいるかどうかなんて、わかるわけがないから。
ステップを上がって、ベルを鳴らそうと・・・いや、やめよう。


結局、僕はそこまで行って、何もせずに立ち去った。


でも、すっぱりあきらめるのも癪だから。
この間、ユノとスタンフォードと一緒に行った、あの公園に行ってみた。

誰もいない。
僕は、ベンチに座って、ため息をつく。


馬鹿みたい、俺。


自分が滑稽に見える。
何、ユノの影を追ってんだ。


途中で買ったコーヒーと、スポーツ雑誌を取り出して。
何気に読んでいると。


もう少し、厚着してくればよかった。
まだ昼だというのに、肌寒い。

風邪引きそうだ。
もう・・・帰ろうかな。


そう思った時。
突然、どこからともなく。
大きな黒い犬が、僕の近くに走ってきた。


あ・・・・!


僕は、自分が見ているものが、幻じゃないかと思った。


「スタンフォード?」


名前をそっと呼ぶと、僕のところにやってきて、くんくん匂いを嗅ぎながら、おすわりして。




「スタンフォード!」


僕の背後から・・・聞き覚えのある声がした。


「すみません・・・驚かせませんでしたか・・・?」


僕は、立ちあがって、振り返る。



「・・・チャンミン・・・?」


思いがけなく。


ユノはちょっと驚いた顔をして、僕の名前を呟いた。

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a lover's concerto(my serenade)

a lover's concerto 15

2012/10/14



また、週末が巡ってくる。


夜に出かけて、お酒でストレスを紛らすのはやめた。
そのかわり僕は、アパートで大人しく読書をして過ごした。


いや、実際は、友人に飲みに出かけようと誘われた。
が、断ったんだ。


・・・ユノから、電話がくるかも、なんて。
そんなことがちらっと頭をよぎったから。


でも、金曜日の夜も、ユノからは連絡も何もなかった。


なんでこんなに気になるのかが、不思議なくらいわからなかった。
悩むぐらいなら、電話すればいいんだ。
それに、ユノのアパートだってどこにあるのかわかってんだし。


土曜日になって。


自分の部屋の窓から、外を見たら。
こんなことしてたら、じきにすぐ寒くなって。
人々は冬眠するように、外に出なくなる。
そんな季節になって、あの時こうしておいてもよかったんじゃないか、なんて。
そんな風に思いたくない。

なぜか、そんな気持ちになって。


「ミミ、ちょっと出かけてくる」


ミミは、僕の顔を見て、可愛らしく鳴いた。


足早に出てきたものの、何かがすべてふっきれたわけじゃなかった。
とにかく、歩きながらどうしようと考えた。


不思議と、ユノと最初に待ち合わせた、ユニオンスクエアに足が向いていた。
待ち合わせしたのに、ミミの調子が悪くなって、僕はユノに電話をしたことを思い出しながら。
前にあるバーンズ&ノーブルに入って、中をうろつく。

今はやりのベストセラーや、スポーツ雑誌を見ながら。
もしかしたら、ユノがここに来てないかな、なんて。
そんなこと想像したりして。

30分ほどうろついて、ふらっと外に出る。
ぶらぶらしながら、気がつくと。
ユノのアパートから3ブロックほど近くまで来ていた。

行ってみようか。
ベルを鳴らして、いなければ仕方ない。

僕は、ポケットに手を入れて、アパートに向かった。


程無く着いて。
歩道から、ユノの部屋を見上げる。

もちろん、ユノがいるかどうかなんて、わかるわけがないから。
ステップを上がって、ベルを鳴らそうと・・・いや、やめよう。


結局、僕はそこまで行って、何もせずに立ち去った。


でも、すっぱりあきらめるのも癪だから。
この間、ユノとスタンフォードと一緒に行った、あの公園に行ってみた。

誰もいない。
僕は、ベンチに座って、ため息をつく。


馬鹿みたい、俺。


自分が滑稽に見える。
何、ユノの影を追ってんだ。


途中で買ったコーヒーと、スポーツ雑誌を取り出して。
何気に読んでいると。


もう少し、厚着してくればよかった。
まだ昼だというのに、肌寒い。

風邪引きそうだ。
もう・・・帰ろうかな。


そう思った時。
突然、どこからともなく。
大きな黒い犬が、僕の近くに走ってきた。


あ・・・・!


僕は、自分が見ているものが、幻じゃないかと思った。


「スタンフォード?」


名前をそっと呼ぶと、僕のところにやってきて、くんくん匂いを嗅ぎながら、おすわりして。




「スタンフォード!」


僕の背後から・・・聞き覚えのある声がした。


「すみません・・・驚かせませんでしたか・・・?」


僕は、立ちあがって、振り返る。



「・・・チャンミン・・・?」


思いがけなく。


ユノはちょっと驚いた顔をして、僕の名前を呟いた。

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a lover's concerto 14

2012/10/13



次の日の朝。

ミミが僕の顔を舐めてくる感触で、目が覚めた。
時計を見ると、すでに昼近く。

「ごめんごめん、お腹すかせちゃったね」

ミミはすごくがっついていて、僕が起きるまでしつこく顔を舐めたり、
瞼を爪でひっかいたりして、「起きて」と言ってくる。

えいっ!とベッドから這い出して。
床が、ひんやりとして冷たい。


キッチンに行って、ミミの食事を用意して、食べさせる。

がつがつ食べてるミミを横目に、僕は椅子に腰かけて。
昨日の夜のことを、ぼんやりと考えていた。



ユノ。



せっかく楽しい時間になるはずだったのに。
ユノのせいじゃない。
・・・誰のせいでもないんだけど。



レイはきっと誤解をしてる。
僕とユノは、知り合って間もないし。
それに、レイが思ってるようなことは、何もないし。


そんなことが、頭の中でぐるぐる回っていた。



・・・チャンミンとは、仲良くなれそうな気がする・・・。
笑って、そんなことを言ったゆのの顔が浮かんだ。



電話・・・してみようか。
携帯を掴んで、ユノの番号を呼び出して。
土曜の昼間に迷惑かな、と思う。
もしかしたら、レイと一緒にいるかもしれないし。

コ-ル音が聞こえた。

やっぱり・・・。
僕は、途中で電話を切った。


着信は残ってしまっただろうけれど。



・・・結局、その週末、ユノからは何の連絡もなかった。



ニュ-ヨ-クは、日に日に秋の訪れを感じさせるようになってきた。
朝起きると、空気が冷たいし、
そろそろコ-トを出さないと、通勤途中で風邪をひきそうだ。
アパ-トと出ると、木々はすでに赤く染まり、枯葉の乾いた音が聞こえるようだった。



その週は、僕が勤務する学校で、会議やら試験やらで忙しくて。
ユノのことは、どこかでひっかかっていながらも、
自分からアクションをすることもできずに、
僕の頭の中で、ぼんやりと浮遊していた。


ユノからも、連絡がない。
きっと仕事が忙しいんだろうな、と思いながら。


携帯が鳴るたびに、ユノかも・・・と思って確認するけど。
やっぱり違う。


そんなこんなで、ただ忙しく一週間が過ぎていった。

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a lover's concerto 13

2012/10/11



ユノは、僕の顔を見た瞬間。

レイの胸を両手で押して、ものすごい勢いで、走って行ってしまった。


ユノ・・・・?


言葉にならなかった。
見てはいけないものを見てしまった・・・。
それだけは、確かにわかった。


そこに残された、僕と、レイ。


「・・・つきまとうなって言ったじゃん」


レイは、ユノを追いかけもしないで、言い放つ。


「そ。見たまんま。オレとユノは、そういうカンケー。」


僕から視線を外さずに、ちょっとだけ勝ち誇ったような表情をして
その場からレイも立ち去った。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


僕は、その晩、自分のアパートに戻ってから、
ユノに電話すべきかどうか、迷った。

電話をしたところで、何を言っていいかわからなかったし。

気にしてないよ、とか、
ごめん、って謝ったりするのとか。

おかしいよな、それ。

そんなこと言ったら、
ユノは激怒するかもしれないし。

どちらにしても、傷つける可能性が大きいと思った。

僕は。
男どおしで付き合うって事に関しては、自分はそういう人間ではないけれど。

だからってそれを否定することもないし。
できたら、これからもユノとは友人でいたい。

それを伝えたいだけないんだ。

でも、そこに行くまでに、どう話を切り出したらいいのかがわからなくて。
夜もかなりふけていて。


その晩は、ミミを抱っこしながら。
ユノの少年のような、屈託のない笑顔ばかりが頭に浮かんでは消え。

そのうちに、僕は眠りについた。

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a lover's concerto 12

2012/10/09



あんた・・・と言われて、少なくともフレンドリーな感触は全くなくて。


「そうだけど・・・」


このレイって男は、初対面の時もそうだった。
なんだか態度が攻撃的で。
なんでそんな風にされるのかが全然理解できなくて。


「チャンミンさんさぁ、悪いけど、ユノにまとわりつくの、迷惑だよ」


それだけ言って、足早に店の中に消えた。


・・・・まとわりつく?
誰が?
俺が・・?

意味がわからなくて、その言葉を何度も反芻する。

ユノに・・まとわりつく・・・?


さっぱりわけがわからない。



・・・まあ、いい。


どちらかと言ったら短気な自分だけど、この世の中には自分の理解を越えた人々がまだたくさんいる。
そう思ったら、レイという男が取るに足らない人間のように思えた。
何か誤解してるとしても、ほっておこう。


ただ。
ユノが迷惑してるなら、話は別だけど。


今まで心地よかった風が、急に肌寒くなって。
僕は、足早に店内に戻った。


「ああ!チャンミン!お前どこにいたわけ?」

同僚の子も、その友達も、もう帰っちゃったよ。
挨拶もせず帰って悪いって言ってたぞ。

そう言われて、我に返った。
小一時間、外にいたことに気がついた。


悪い悪い、と僕は謝りながら、そろそろ帰ろうか、という話になった。


ちょっと待って、トイレ行ってくるわ、と友人に声をかけて、
再度店の奥のレストルームへ急ぐ。



薄暗い店内の奥に足をすすめていくと。


何か言いあってる声が聞こえてきた。

その声は、突き当たり、曲がった角の向こうから聞こえてくるようで。


そんなんじゃない。
とにかく気に食わない。あいつは絶対に――――!
ちょっ・・!やめろっ・・・てっ!!。


興奮している男の声と、ほかのもう一人の声が聞こえて。


角を曲がって行くと・・・・。


奥の壁越しに、背を向けた男が立っていて。
無理やり、何か、もみあっているようにも見えた。
相手は、その男の影で見えなくて。

痴話喧嘩?
無理やり男が、相手の女にキスしようとしてるのかと思った。


僕の足音で、男が振り返った。


・・・・・レイ、だった。


そして、その向こうにいたのは・・・・ユノ。



一瞬、凍りついた。
こちらに振り返った、レイの顔。
その向こうにいる、ユノの顔。


その時、僕は、2人にはどう映ったんだろう。

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a lover's concerto 11

2012/10/08



新しい友人ができると、その人との関わりを濃密に取りたくなる時がある。

週末に誘われたパーティー。
僕は、腐れ縁のあの友人と、同僚の女性の友人を数人、そのまた友人数人と一緒に
パーティーにお邪魔することにした。

木曜の夜に、ユノから電話があった。

イーストビレッジのとあるバーで8時ぐらいから集まるみたいだから、と。
聞くとユノの大学時代の友人のお祝い事のようだった。
カジュアルな集まりだから、気楽に来てねと言われて。
じゃあ、明日に!と電話を切った。


当日。
ちょっと時間をずらしてバ―に行くと
すでに結構人が来ていてアルコールが大量に振る舞われていた。

「チャンミン!」

奥にいたユノが声をかけてくれた。

その日の主賓の友人や、そのほかの友達も気さくに紹介してくれて、
僕も連れの友人たちを紹介して。

おのおのビールやらワインやらをオーダーして、立ち飲みの形式で
ざっくばらんな感じが僕をリラックスさせた。

週末だから・・・。
思いっきりハメをはずしてもっとビールを飲みたいけれど・・・。
この間のような失態があってはいけない、と自分に言い聞かせて。


「チャンミン、もっと飲めるんじゃないの?」


ユノに冗談まじりでそう言われて、僕はふふふ、と笑った。


「もうあの時みたいにトイレで背中さするの、ごめんでしょ?」


「そんなことないよ。もう今はチャンミンのこと、知ってるし。気持ち悪くなったらいつでも言っていいよ」


じゃあ、お言葉に甘えて、というわけにもいかず。
何かあったらお世話になるよ、と伝えて。

わかった!とユノは笑って、他の友達にひっぱられて向こうに行ってしまった。

そこからは他の人の輪に入って、談笑したりして、あっという間に時間がすぎた。
そこにいた人は、ユノの仕事の同僚もいたし、バスケ仲間だという人もいた。
ボランティア活動で知り合ったとか、スタバの店員さんとかも。


ユノはきっとすぐに、誰とでも友達になっちゃうんだろうな。


ちょっと酔ったからか、外の風にあたりたくなって。
店の奥のエントランスから外に出る。


ひっそりとした裏道の、歩道のポールに腰掛けて。
表通りから、人の声が結構聞こえる。
金曜日の夜は、どこもかしこも騒がしい。

ひんやりとした風が、僕の体を纏う。

ちょっとだけ、酔ったかな。
アルコールで高くなった体温に、この風は心地よかった。


暗がりの中に、街灯がぼんやりと道を照らして、
ふいに空を見上げても、星なんて見えないけれど。


「チャンミン、ここにいたの?」


後ろから声を掛けられて、振り向くと、ユノが店から出てきた。


「風が・・・気持ちいい」


ほんとだ、とユノが笑う。


僕たちは、多く言葉を交わさず、ただ、夜の風を感じていた。


「そう言えば、あいつら、まだいるかな?」


連れてきた友達と、同僚、そのまた友人たちのことを思い出した。


「ああ、まだ中にいるよ。」ユノが言う。


「あの子・・・チャンミンの彼女?」


聞かれて、一瞬、誰のこと?とユノの顔を覗いた。


ああ、だから、あの同僚の女の子・・・明るそうでチャンミンに似合いそうだな、って思って。
そんなこと言うから。


「・・・・残念だけど、あの子はただの同僚。・・・彼女とは1カ月前に別れたから・・・」


そう答えると、「そうなんだ」とだけ返ってきた。


彼女のことは、時々思い出す。
ミミを夜抱っこして寝たりする時。
夜中に眠れなくて、ベッドの中でぼんやりする時。
明け方、まだ暗い時間に、ふっと目が覚めたりする時。

でも。
不思議なことに、連絡をとりたい衝動にかられることはなくて。

思い出しても、その度に、「もう終わったのだし」という結論が僕を待っているのは
もうわかっているから。


そんなことを思いめぐらしていると。


「ユノ!こんなとこにいたの?ずっと探してたんだけど」


振り向くと。
確か・・・・この間、カフェで相席した・・・レイ?


「ああごめん。ちょっと休憩してた」


ユノは、立ちあがってレイに連れられて行く。

ユノが店内に戻るのを見届けて。
レイが僕のところにゆっくり戻ってきた。


「あんた、チャンミンさん、とか言ったよね」


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