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ぼくのうちに居候がやってきた43




次の日からユノは、これまでの僕との生活の身辺整理をし始めた。

といっても、ユノの持ち物は、あのボストンバッグに入るだけのものしかなく。
ユノのために空けたタンスの引き出しに、ユノはもう着替えをいれなくなった。
いつお迎えがきてもいいように、出し入れはすべてボストンバッグにしてる様子で。

狭いこのアパートでそれを目撃するのは、僕にとってすごくつらかった。
正座をしてボストンバッグに着替えを入れてるユノの背中を、僕は何も言わずに後ろから見つめる。
ふっとユノが後ろにいる僕に気がついて、振り向いて目が合う。
ユノの目が、穏やかに僕を見つめ返してくれる。


「チャンミンさん・・・僕、今日店長さんに・・・仕事やめます、って・・・言ってきます」


ユノはうつむいて、肩を落とす。


きっと、店長さんもさちえさんも・・ゆりこさんものりこさんも・・ユノさんがいなくなるとさみしくなるね。

僕も・・本当にさみしいです。そしてこんなにご迷惑をおかけしてしまって・・・申し訳ないです。

ユノさん、しっかりね。じゃあ・・僕、仕事行ってきます。

チャンミンさん、行ってらっしゃい。気をつけて。

うん。行ってくるねユノさん。


やっとユノの笑顔が見れた。
僕はアパートを出ても、何度も振り返って見送りに出てくれたユノに手を振る。
ユノは、ずっとずっと・・僕が見えなくなるまで見送ってくれた。


小さくなっていくユノは、角を曲がって見えなくなった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


僕が仕事を終えて、アパ-トに戻ると。
ユノは気丈に振舞っていた。

ユノがわぁわぁ泣いたのは、後にも先にもあれが最後で。
必死に笑顔で僕に接しようと努めてくれているユノが、不憫でたまらないけど。
そうしてくれているからこそ、僕が我儘言ったりユノを困らせたりしたらいけないんだろうって、そう思うんだ。


僕は、着替えて6畳の部屋に行くと。
炬燵にちょこんと座って、ユノはテ-ブルの上の夕ごはんをぼんやり見つめていた。


「ユノさん、今日の夕飯何ですか?すごくいい匂いがする」


僕も努めて、普段通りに振舞おうとする。


「・・チャンミンさんが好きな、すき焼きです」


僕が座ると同時に、ユノは卓上コンロに火をつけた。


「おいしそう。ああ、お腹がすいた」


ぐつぐつ煮えるまで、2人でコンロの炎を見る。


「ユノさん、今日ね、僕、仕事で新しいプロジェクトを立ち上げたんだ」


徐に僕が口火を切る。
こんな風に、僕の仕事についてユノに話すのは初めてかもしれない。


「・・プロジェクト?・・どんなのですか?」


ユノは生卵を溶く手を止めて、いろいろ僕の話を興味深そうに質問してくれるから。
僕も一生懸命話した。


「チャンミンさんはお仕事がとってもできるから、絶対うまくいきます!僕、応援してます!」


「ありがとユノさん。ユノさんがそんな風に言ってくれると、本当にうまくいくような気がする」


チャンミンさん、食べましょうか。

そう言って、ユノがすき焼きをよそってくれた。



「おいしいっ!わぁぁ、ユノさん、これホントおいしい!すごいすごい!」


僕はユノの料理をいつも絶賛してるけど、このすき焼き、本当においしいね、って何度も褒めると
ユノは嬉しそうにふふふっと笑った。


また今度、作ってね。言いそうになって、はっとしてやめた。
そして、ふっと、また寂しくなる。


ユノとはいつまで一緒にいれるのだろうか・・・。

もう、猶予の時間は残っていないんだね、きっと。

ユノに伝えたいことがたくさんあるのに、口を開いたら僕は泣いてしまいそうで。
黙ってユノを見つめるしかなかった。





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