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ぼくのうちに居候がやってきた49~最終話~




僕は今、湖の畔に立っている。


まだ冬の名残はあるものの、確実に春がそこまで来ているのがわかる。
桜はまだ咲いていないけど、つぼみが膨らんでくるのはあともう少し。



もうじき、春がくる。



春になったら桜を見に行こうね、とあの日ユノと約束したことが
昨日のように思い出される。

カレンダ-に〇をつけて、きみは指折り数えて待ってたね。



畔の向こうから、風が吹いた。
桜が満開になったら、このあたり一面花びらが風に舞って、桜色になるだろうな。





あの時。


きみはシスタ-と、どんな話をしたの?
決断をしたきみには、得るものもあれば、失うものもあったはずだ。



あの夜。


一晩だけの猶予をもらったきみは、何の迷いもないように見えた。
どちらの選択をするにしろ、僕はきみが決めたことを尊重すると心に決めていたよ。



次の日の朝、目覚めるときみは、いつもと変わらない、屈託のない笑顔でいたね。
本当に天使のような、穢れのない、真白な心で。


その笑顔を見て、僕はただ・・・ただきみがそばにいるということが
こんなにもありがたいことなんだと、感謝の気持ちでいっぱいだった。





きみが僕と出会う前にいた世界のことは、
僕は何も知らない。


なぜ、きみが僕のところにやってきたのか。
なぜ、僕のところにやってきたのがきみなのか。


なぜ?
・・・でも、もういいんだ。


シスタ-はきみのことを多く語ることは出来ないと言った。
それでも“本当に心の優しい子なんです”と言ったシスタ-の言葉は
きみという人のすべてを物語っていたんだろう。


きみがこれまでに果たしてきた、使命。
きみがこれまでに出会った、人たち。


きみにとって、出会いと別れはいつもセットだったのだろうか。
人を幸せにする力があるきみにとって、与えられた使命は、きみを苦しめることはなかっただろうか。



ユノさん・・・

夏が来たら、海に行こう。

秋になったら、山に登って紅葉を見たい。

冬になったら、降り積もる雪の中で、もう一度きみを抱きしめたい。



めぐる季節を、きみと一緒に過ごしたい。



そして、来年の春も。
きみとこうして、桜を見に来たい。



一緒に。
この先も。










「チャンミンさぁんっ!!」










振り向くと、きみは大きな桜の木の下で、
僕に向かって手を振っている。










「チャンミンさぁんっ!!」










僕の名前を呼ぶきみが、ただ愛しい。



きみのそばにかけて行って、抱きしめる。



「チャンミンさん・・・お花見に来るの、ちょっと早すぎましたね」



そう言って、きみは笑う。



「そうだね、まだ早かったね」



「せっかくチャンミンさんの好きなビ-ルと、お団子をたくさん買ってきたのに・・・」



買い物袋の中を覗き込んで、きみは考え込んでる。



「ユノさん、せっかく来たんだし。2人だけで早めのお花見しましょうか」



「はいっ!」



ユノは嬉しそうに、ボストンバッグからビニ-ルシ-トを出して、2人でえいっと桜の木の下に敷いた。






人もほとんどいない、湖の畔で。
僕とユノさんだけの、お花見。



また、ふっと風が吹いた。



横に座っていたユノが、ふいに顔を上げて空を見つめている。




なに?なにが見える?


空の向こうに、お星さまが見えます。お花は・・まだ咲いてないけれど、もうじき咲きます。
それに、春の風も吹いてます。


そうだね。ちょっと寒いけど、気持ちいいね。


はい。



ユノが見ている空の向こうには、きっと。
ユノを見守り続けてる人が、たくさんいるね。



ユノは目を瞑って、空に向かってにっこり笑った。





ユノ・・・・。




ありがとう。




かけがえのない、大切な、僕の家族。




ユノ・・・・。




僕は水辺に戻って、そこに咲いている花を摘んで、ユノに差し出した。



あっ!



ユノが何かを思い出したように。
そのあと、にっこり僕に笑いかけてくれた。



覚えてる、ユノさん?



はい。僕がチャンミンさんに、差し上げたことのあるお花です。



そう。・・・ナズナ、っていうんだよ。



ナズナ・・・?



そう、ユノさんにあげる。



あの時にユノさんがナズナと一緒に僕にくれた、ユノさんの心。
今度は、僕がユノさんにあげる番だ。



ユノはナズナを受け取ると、嬉しそうに自分の耳にかけてみせた。



ふふふ。ユノさん、女の子みたい。



僕、かわいいですか?



あははは、そうだね、すごくかわいい。




春の風に吹かれて、ナズナの小さな花弁が、ユノの耳元で優しく揺れた。







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「ぼくのうちに居候がやってきた」 完


ご愛読くださった皆様へ。

これまでのご愛読、本当にありがとうございました。
改めて「あとがき」をあげますが、皆様に感謝の心を込めて。


管理人Noah



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