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stay gold 21




僕は目の前にいるユノさんを。
時間を忘れたかのように、撮り続けた。


一心不乱・・・って表現がしっくりくるほどに。
ユノさんは僕の視線を最初は意識してたみたいで、ちょっとぎこちない表情をしてたけど。
ちょっとカッコつけてるユノさんも・・・最高だ。


そのうちに、ユノさんは「見られてること」に慣れてきたみたいで
普段のユノさんになってくる。


その時に、僕の携帯にメールが来て。
僕はびっくりして、「あ・・っ、すみません、ちょっと待ってください」って
メールを確認する。


友達からだった。


あたふたしながら急いで返信する。


す、すみません、えっと・・・メール送信、お、おわりましたっ!


そう言って振り返ると。


鴨居に両手をかけて、ユノさんが僕の目の前に立ってた。
二の腕から肩の盛り上がり、脇のくぼみから胸筋・・・全部全部、逞しくって・・・。


わざとやってるのかって思うほど・・・ドギマギしてしまう。
ああ、僕のこの気持ち、ユノさんにバレてんじゃないだろうか・・。


チャンミン・・・急がなくてもいい。俺、ここにいるから・・。


ユノさんが、座ってあたふたしてる僕を上から見下ろして。
なんだか、僕に覆いかぶさってくるくらいの勢いだから・・・は、恥ずかしい。


あっ、あっと、えっと・・は、はい。もう、メール・・完了しましたです、はい!


言葉遣いがおかしい・・・僕。
もうっ!落ち着け、自分!


チャンミンさ、もしよかったら・・・。


言いながらユノさんは、押入れをあけてがさごそ何か探してるみたい。
なんだろ・・。


これ。


ユノさんが僕に差し出したのは・・・カメラ。


これさ、俺が初めて買ったカメラなんだけど。高校の時、バイトしてやっと買ったやつ。


ユノさんは、そのカメラを大切そうに撫でて、レンズにふっと息をかけて、
埃をとってる。


もし・・写真ちょっとでもやってみよっかなって思ってたら、これ・・あげれないけど、貸すよ。


えっ・・・?だって・・・これ、ユノさんの・・・。


ユノさんの大切な、大切なカメラ。
僕に貸してくれるなんて、そんな・・・。


撮った写真、現像するのも楽しいよ。携帯の写真とはまた違ってさ。


じゃ、じゃあっ!ぜ、ぜひ・・僕、大切に使います。貸してください!・・それと・・。


それと・・・?なにチャンミン?


あの・・・図々しいかもしれないんですけど・・・ユノさんを・・・撮りたいです。・・いいですか?


俺!?だって今撮ったじゃん!まだ撮るの?


はい!撮ります、僕。


え~チャンミン、もっと他に―――。


いえ!ユノさんが僕を撮って、僕がユノさんを撮ります!もし・・お邪魔じゃなかったら・・・時々で構わないんです・・。


ん~、とユノさんは考えてるみたい。


ダメですか?って僕はちょっと上目遣いでユノさんを見る。


ユノさんの邪魔、しませんから。
手を合わせて、ユノさんを拝んでしまう。



・・・いいよ、お互い撮り合うっていうのが、なんだか笑っちゃうけど。


ユノさんが言ってくれた。


やったぁ!
僕は思わずガッツポーズしちゃった。


チャンミン、すごい喜びよう・・。俺でいいのホントに?


はいっ!ユノさんがいいです!!


俺がいいなら・・仕方ないな。いいよ。現像する時もよかったらここでしたらいいし・・。


嬉しかった。
それならもっともっと長い時間、ユノさんと一緒にいれるし。
ユノさんの近くにいれる!


そのかわり・・・部活も勉強もなおざりにすんなよ。約束ね。


はっ、はい!


はぁ、なんて今日はいい日なんだろ。
昨日の落ち込みから一転、僕はニヤニヤがとまらなかった。





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